Tumor
Immunity腫瘍免疫の基礎知識(垣見の腫瘍免疫学)
免疫細胞治療学講座で実施している研究のベースとなる腫瘍免疫に関する基礎知識、考え方を概説します。
1.B細胞とT細胞
免疫応答を担当するリンパ球にはおおきく分けてBリンパ球とTリンパ球の2種類あります。抗体産生にかかわるB細胞と細胞性免疫の中心を担うT細胞です。いずれも受容体遺伝子の再配列により、抗原特異的な受容体を発現し、多様な抗原に対する獲得免疫を担っています。B細胞研究のJacques Miller博士とT細胞研究のMax D. Cooper博士が、2019年のLasker賞を受賞されました。その時の講演内容は、まさに近代免疫学のなりたちを知るうえで非常に興味深いので紹介します。
http://www.laskerfoundation.org/awards/show/b-and-t-cells-organizing-principle-adaptive-immune-system/
抗体は、細胞表面・細胞外に存在する標的(抗原)に結合する液性因子です。すでにがん治療において、RituximabやTrastuzumab、Cetuximabなどの抗体治療薬は非常に重要な位置付けをされていますが、すべて細胞表面の分子に結合する抗体です。免疫チェックポイント阻害剤のNivolumabやPembrolizumabもT細胞表面に発現するPD-1分子を抗原認識します。抗体は、人工的に細胞膜に穴をあける処理がないと、そのままの形では細胞内の抗原を標的として結合することができません。
そこで細胞内の標的(抗原)に対する免疫を担当するのがT細胞です。細胞内のタンパクは、プロテアソームでペプチドに分解されます。分解されたペプチドはトランスポーター(TAP)によってER内に輸送され、b2ミクログロブリンとヘテロダイマーを構成するMHCクラスI分子と結合します。MHCクラスI/b2ミクログロブリン/ペプチド複合体が細胞表面に提示されます。T細胞は、その受容体(TCR)を用いて、細胞表面のペプチドMHCクラスI複合体をスキャンして、細胞内のタンパク合成をモニターしています。